われても末に あはむとぞ想う。【第二話】

物語

ジリリリリン ジリリリリン

ある日、オンボロの黒電話が鳴いた。

母が出ると、じいちゃんを呼んだ。どうやら定年まで働いた会社の元同僚からの電話らしい。

「もしもし・・・」

珍しく話し込んでいる、その横で母はなにか言っているみたいだ。

「じゃあ来週の日曜日で。」

ガチャ

どうやらゴルフの誘いだったようだ。そして、それを断ろうとするじいちゃんを母は必死に説得していたらしい。

結局、気分転換を理由にじいちゃんは

晴れた日曜日にゴルフに出かけることになった。

カントリークラブで友と待ち合わせをした。

会うなり、昨日話していたみたいに昔話込みのゴルフが始まった。

「俺なんかさあ、いつも邪魔者扱いだぜ」

友は定年退職してからずっと家にいるため、妻には邪魔者扱いされているみたいだった。

「お前が一人になっちまって寂しがってるだろうから誘ってやったんだよ」

そんな友の言葉に救われている自分がいたが、

友の愚痴には少し羨ましくも聞こえた。

「で、最近落語にハマってるんだよ、今度一緒に行かねえか?」

「昔から勉強は嫌いで難しいことはわからん」

「いいんだよ、雰囲気だけでも楽しめば」

友の強引な誘いに断る方が面倒になっていた。

そのまま勢いに飲まれ、

そこそこのスコアと来月の落語がこの日のハイライトだった。

じいちゃんは今日落語に行くらしい。家族にとっては大事件だった。

あの父さんが落語・・・

と一番びっくりしていたのは無理やり外に出そうとした母だった。

ボクは少し、よそ行きの格好で出ていくじいちゃんを玄関で見送った。

「気をつけてね」

約束の場所に着いた。友が時間通りに現れ、パンフレットを渡しながら、説明を受けた。よくわからないが、少し有名な落語家らしく友は張り切ってプレゼンしていた。

前座が終わり、最後のトリになった。

その落語家がするのはどうやら崇徳院という落語らしい。

百人一首の

「瀬をはやみ 岩にせかるる 滝川の われても末にあはむとぞ思うふ」

を題材にした古典落語と友に教わった。

現代語訳すると

川の瀬の流れが早く、岩にせき止められた急流が2つに別れている。しかしまた一つになるように、愛しいあの人と今は分かれても、いつかきっと再会しようと思っている。

崇徳院が終わり会場がパッと明るくなった。

なぜか最後の崇徳院が心の何処かに引っかかっていた。

どうも初めて聞いた一首ではない気がしてならなかった。

そして悶々としたまま帰路についた。

続く。。。

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